よもぎ蒸しで子宮から温める~民間の万能薬「よもぎ」の効能~
韓国の健康法「よもぎ蒸し」の効能をご存じでしょうか?
日本でも韓流ブームが広がった頃から知られるようになったよもぎ蒸しには、生理痛や更年期障害の緩和といった婦人科系の悩みの改善をはじめとして、美肌やダイエット、デトックスなど、女性にとってうれしい効能がたくさんあります。
今回はよもぎ蒸しを中心に、昔から身近な薬草として親しまれてきた「よもぎ」のさまざまな効能を紹介します。
よもぎ蒸しとは
よもぎ蒸しは韓国に数百年も前から伝わる自然療法です。
もともとは女性の産後の肥立ちを良くするために行われてきたもので、現代では婦人科系の疾患にも効果があると言われています。
基本的なやり方は、首から下をすっぽりと覆うマントを着て穴が開いた専用の椅子に座り、椅子の下でよもぎを中心に複数の生薬を調合したものをお湯で沸かして、その蒸気を下半身にあてるというものです。
時間の目安は大体40分前後で、体を芯から温めることができます。
同じように蒸気で温まるサウナと違うところは、よもぎ蒸しは顔を出した状態なので長時間行っても苦しくないこと、そして皮膚や粘膜から薬効成分を吸収できることです。
人間は口からだけでなく、皮膚・粘膜からも薬の成分を吸収します。解熱剤の座薬などはその代表例です。
よもぎ蒸しでは、よもぎやその他の薬草のエキスが入った蒸気を最も吸収率が良いとされる粘膜に直接あてます。
つまり、蒸気による温熱治療の効果とともに、全身の皮膚・粘膜から薬草の効能も得ることができるのです。
よもぎの効能
古来、西洋でも東洋でもよもぎは薬草として重宝されてきました。
数ある薬草の中でも、よもぎは「ハーブの女王」とも呼ばれる万能薬です。
お灸に使われる「もぐさ」の原料もよもぎで、昔は切り傷・擦り傷ができた際にはよもぎを塗り薬として使うこともありました。
漢方ではよもぎを「艾草(がいよう)」と言い、「病を止める草」という意味があるとのことです。
よもぎの主な効能は次のとおりです。
○浄血・造血・止血作用
血液をサラサラにする作用、造血を助ける作用があります。止血作用を併せ持つため、貧血予防にも効果的です。血行を良くし血液をきれいにするため、冷えの改善にもつながります。
○体を温める効果
よもぎは東洋医学では体を温める「温性」の植物です。冷え症が改善されることで、冷えからくる生理痛や肩こりなどの不調も解消されます。
○デトックス・美容効果
利尿作用があり、体内に溜まっていた余分な水分や老廃物を排出させる働きがあります。むくみ改善に効果があり、また血液やリンパの流れが良くなることで、美肌効果や新陳代謝アップによるダイエット効果も期待できます。
食物繊維が豊富なため、食用にすれば腸内環境を整えてくれ、便秘解消にもつながります。
○リラックス効果
爽やかなよもぎの香りにはアロマとしての効能もあります。イライラを鎮め、リラックス、安眠に導きます。
よもぎ蒸しの効能
よもぎ蒸しでは、上記の薬効成分を含んだ蒸気を吸収率の高い膣粘膜に直接あてて、蒸気とよもぎのダブルパワーで下半身からしっかり温めることで、婦人科系疾患の改善に効果が期待できるのです。
現在では、生理痛や生理不順などの生理に関わる悩みの改善、妊活や妊娠中の体調管理、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気治療の一環として、幅広く活用されています。
その他、血行不良によっておこる肩こり・腰痛・便秘・痔の改善、大量の発汗によるデトックス作用など、蒸気とよもぎの相乗効果によって得られる効果は人によってもざまざまです。
定期的によもぎ蒸しを行うことで冷え体質を改善でき、さらに基礎体温・基礎代謝量がアップするのでダイエットやアンチエイジングにもつながります。
冷え症の人や子宮に何かしらの悩みを抱えている人にはおすすめの対策法と言えるでしょう。
特に生理前に行えば、生理前のイライラや気分の落ち込みを解消し、生理痛を緩和するのに役立ちます。
一方で、よもぎ蒸しはあくまで民間療法であり、1回行っただけで確実に効果が得られたり、効果が継続したりするものではないということも留意しておいてください。
1回の施術でも大量に汗をかいてスッキリした気分になり、次の生理が楽になるかもしれませんが、体質改善は継続して行うことが大切です。
また、よもぎはキク科の植物のため、キク科アレルギーの方は注意しましょう。生理中のよもぎ蒸しについても、衛生面を考慮して避けた方が良いと言われます。
サロンによって生理何日目から行って良いかなど対応が異なるため、事前に確認しておきましょう。
自宅でもよもぎ蒸し気分を
日本でもよもぎ蒸しを行うサロンが増えたものの、自宅から遠かったり、忙しくて通う時間がとれなかったりする人、また昨今の外出自粛のためにサロンに通いづらい人も多いはずです。
自宅でもよもぎ蒸しができるように、専用の椅子・電気コンロ・マントなどの一式を揃えたよもぎ蒸しセットも販売されて、そこからもよもぎ蒸しの人気の高さが伺えます。
初期費用は高くとも、何度もサロンに通う時間と料金を考えれば、最終的にはお得になるでしょう。
それでもなかなか手が出せるものではないので、自宅で手軽によもぎ蒸し気分を味わえる方法も紹介しておきます。
○よもぎ風呂
普段のお風呂に入浴剤としてよもぎを使えば、よもぎ蒸しに近い効能が得られます。
よもぎ風呂は、体を温める効果・浄血効果・デトックス効果、さらに抗炎症作用・抗菌作用もあるため、子供のアトピー治療にも使われている方法です。花粉症にも効果があると言われています。
乾燥させたよもぎの葉をガーゼなどに包んでお風呂に入れるか、先に鍋などで煮出して煮汁をお風呂に入れます。
よもぎ蒸しは大人の女性が行うものというイメージですが、よもぎ風呂なら家族全員が入れるところも良いですね。
○よもぎ蒸しパット
紙ナプキンと使い捨てカイロを合わせたような形のアイテムです。
よもぎなどの薬草が入ったパッドの下に発熱体を付け、下着に装着して使用します。
程良い温度で骨盤周りがポカポカと温まり、簡単によもぎ蒸し気分を味わうことができます。
仕事中や外出の際など、さまざまなシーンで使えるところも便利です。
○温かいペットボトル
よもぎの薬効効果はありませんが、自宅で手軽に子宮を温めることができる方法を紹介しましょう。
やり方はとても簡単で、ホットドリンク専用の小さめのペットボトルにお湯を入れ、股に挟むだけです。
ペットボトルを湯たんぽ代わりにして、骨盤周りをじんわりと温めることができます。
手間もお金もかからないので、自宅でのリラックスタイムにぜひお試しください。
その他のよもぎの活用法
よもぎは繁殖力が強いことから容易に手に入る薬草であり、「飲んで良し、付けて良し、浸かって良し、嗅いで良し、燃やして良し」と言わるほど、使い方も効能も多岐にわたります。
韓国のよもぎ蒸しが日本に広まったのは近年になってからですが、日本でもよもぎは古くから親しまれてきた存在です。
よもぎ蒸し・よもぎ風呂以外にも次のような方法を使えば、よもぎの効能を日々の生活に取り入れることができます。
○お灸
日本でよもぎを使った民間療法と言えば「お灸」の方が馴染みがあるかもしれません。
お灸は温熱によって「ツボ」と呼ばれるポイント(体を巡る生命エネルギーの気の出入り口)を刺激することで、内臓・筋肉・神経など全身の不調を改善する東洋医学の治療法です。
そのお灸に使われる「もぐさ」は、よもぎの葉の裏の綿毛だけを集めて作られたものです。
今は鍼灸院以外で肌にもぐさを直接据えて火をつけるという光景は見かけなくなりましたが、その代わり「せんねん灸」など家庭で手軽にできるセルフ灸が販売されています。
冷えや婦人科系の症状に有効なのが、内くるぶし上から指4本分上にある「三陰交」と呼ばれるツボです。
骨盤内の血流を改善しホルモンバランスを整えるツボで、生理痛・生理不順・PMS・更年期障害・冷え症・足のむくみ・全身のだるさなどに効果があります。
若い女性向けに、台座がカラフルで香りも選ぶことができるおしゃれなセルフ灸もあり、ドラッグストアの他、バラエティーショップなどでも販売されています。
よもぎ蒸しやよもぎ風呂より短時間で済むので、古臭いと思わず、気軽にできる健康法として見直してみてはいかがでしょうか。
○お茶・料理
よもぎの爽やかな香りと少し苦みのある味は、春の味覚の一つです。
栄養価も高く、造血作用やコレステロール値を下げる作用のあるクロロフィル、同じく造血作用があり止血にも関わるビタミンK、優れた抗酸化作用をもつβカロテン、整腸作用のある食物繊維を多く含みます。
春の味覚を楽しみながら、豊富な栄養もいただきましょう。
料理に使うのは春に出てきた新芽の部分です。そのまま天ぷらにしたり、下茹でしておひたしや和え物、汁物などにできます。
草餅や草団子などのお馴染みの和菓子の他に、よもぎの甘い香りはパンや洋菓子にも良く合います。
市販のよもぎパウダーを使えば、下処理不要でさらに簡単、季節を問わずよもぎの栄養を取り入れることができるので便利です。
ノンカフェインの「よもぎ茶」も健康茶として人気があります。飲むだけのお茶なら毎日続けやすそうですね。
お酒好きなら、よもぎをお酒に漬け込んで薬酒にする方法もあります。
○草木染め
古来、薬草は医療用として利用されると同時に染料としても利用されてきました。
そして、薬草で染めた布にもその薬効があるとされています。
例えば、昔の女性の下着である腰巻を染めるのに用いられた赤色の染料「茜」は、漢方では「茜草根」と呼ばれ、よもぎと同じく生理痛・生理不順などの婦人科系の症状に効果がある生薬です。
藍染めで有名な染料の「藍」も、解毒・解熱・鎮痛に用いられる生薬で、藍染めにも同様の作用があるとされます。
落ち着いた優しい抹茶色の「よもぎ染め」にも、同じようによもぎの薬効が期待できます。
よもぎ染めの腹巻や下着などが販売されているので、興味のある方は試してみると良いですね。
よもぎの力で体を温めよう
道端に生えている野草のよもぎに、こんなにもたくさんの効能や使われ方があったとは驚きですね。
それと同時に、体の冷えや血行不良が女性のさまざまな不調の原因になっていることもお分かりいただけたのではないでしょうか。
前回の記事(「漢方で体質改善~女性の悩みに東洋医学のチカラ~」)でも紹介したように、生理痛・生理不順・PMSなどの女性の不調を改善するために処方される漢方薬は、血行を良くするものが中心でした。
冷え・血行不良と女性特有の不調は深く関係しているのです。
また、体温が1℃下がると免疫力が30%下がると言われています。
健康な人の体温は36.5℃で、平熱がそれよりも低い人は注意が必要です。
「冷えは万病のもと」と言われるように、誰にとっても冷えは大敵ですが、男性よりも体質的に冷えやすい女性は特に冷えへの対策が必要となります。
よもぎ蒸しなら蒸気とよもぎのダブルパワーで体を芯から温めてくれ、さらには殺菌作用もあるので、冷え対策としても感染症対策としても有効です。
しかしながら、よもぎ蒸しは頻繁に行うのが難しいという面もあります。
よもぎ蒸しはたまに行う特別なケアとして利用し、普段からよもぎの栄養を食事で取り入れたり、お灸をしたり、他の方法で日常的にケアを行いましょう。
冷えを溜めないように心がけていれば、徐々に体質も変化していくはずです。
次回の記事では「温活」について詳しく紹介するので、そちらも参考にしてみてください。
体調管理に布ナプキン・布ライナーも活用しよう
現代の女性の多くは体が冷えています。まずは体を温めることが重要です。
それとともに、よもぎ蒸しで膣粘膜から薬効成分が吸収されるように、子宮につながる膣には普段から体に良いものをあてておくことも大切だと思われます。
世の中の大半の女性が使っている市販の紙ナプキンの材料は、石油系化学物質であることをご存じでしたか?
一部ではその毒素が子宮に溜まるとも、経血を吸収するための高分子ポリマーが体を冷やす原因になっているとも言われています。
ただし、明確な科学的根拠はないので実際のところどうなのかは分かりません。
それでも、紙ナプキンから布ナプキンに替えた女性たちからは、「生理痛が軽くなった」「生理不順が改善された」「かぶれない」など、生理に伴う不調が緩和もしくは解消されたという声が多く聞かれるのも事実です。
理屈に関係なく、体は温かさ・心地良さを感じているのではないでしょうか。
布ナプキンはオーガニックコットンなどの天然素材で作られていて、肌触りが良く温かいのが特徴です。
同じ素材の布ライナーも、おりもの対策としてだけではなく、重ね着感覚で冷え対策としても使えます。
デリケートな生理の期間に布ナプキンでケアし、生理の期間以外も布ライナーで冷えを防いでいくうちに、生理の不快な感覚が変わっていくのを実感できると思います。
まだ試したことがない方はぜひ一度お試しください。